設計前提条件の整理とは?無線設計エンジニアが最初に行う重要な仕事
本記事では、移動体通信エンジニアの設計業務の中でも 設計前提条件の整理(KPI・トラフィック・障害履歴) について解説します。
この作業は、いきなり設計を始めるのではなく、 「そのエリアが今どのような状態か」 を正しく把握するために行う重要な工程です。
▶ 移動体通信エンジニアの仕事全体は お仕事マップ(J1〜J9) で整理しています。
この記事では、移動体通信エンジニアの中でも設計職(経験者向け)に該当する 「設計前提条件の整理(KPI・トラフィック・障害履歴)」について、 実際の業務内容・役割・求められるスキルを具体的に解説します。
設計業務はどのフェーズに位置する仕事か
本記事で解説する内容は、 J3:設計(無線・伝送)フェーズ に該当します。
設計フェーズは、 置局(J2)で決定した条件をもとに、 施工(J1)や試験(J4)へつなぐ 中核的な役割を担っています。
- 前工程:J2 置局(用地・条件整理)
- 後工程:J4 試験・インテグレーション
なぜ設計前にKPIや障害履歴を確認するのか
設計は「新しく作る」仕事ではありますが、 多くの場合は 既存エリアの課題を解消するため に行われます。
たとえば、
- 特定時間帯だけ通信品質が悪い
- 同じエリアで障害が繰り返し発生している
- 想定以上にトラフィックが増加している
といった背景を理解していなければ、 本質的な改善にはつながりません。
設計前提条件の整理は「設計の質」を決めるスタート地点
無線設計というと、アンテナ設計やシミュレーションをイメージしがちですが、
その前段階として必ず行われるのが「設計前提条件の整理」です。
この工程では、
- 今のエリアで何が問題になっているのか
- どこを、どの程度、どう改善すべきか
を数字と事実をもとに整理します。
この整理が甘いと、どれだけ高度な設計をしても
「効果が出ない」「的外れな増局になる」ケースが発生します。
具体的に確認するデータ①:KPI(品質指標)
まず確認するのが、エリアごとのKPI(Key Performance Indicator)です。
- 接続成功率(音声・データ)
- 切断率
- スループット(上り/下り)
- 遅延(レイテンシ)
- 再接続・再選択回数
単に数値を見るだけでなく、
- 時間帯ごとの差(昼/夜)
- 曜日差(平日/休日)
- 特定エリアだけ悪化していないか
といった傾向を読み取ることが重要です。
具体的に確認するデータ②:トラフィック状況
次に、データ通信量(トラフィック)を確認します。
- 時間帯別トラフィック推移
- 局別・エリア別の通信量
- イベント時・繁忙期の急増傾向
例えば、
- 駅周辺で朝夕だけ輻輳している
- 新興住宅地で年々トラフィックが増えている
といった傾向が見えてくると、
「増局」「アンテナ調整」「伝送増強」など、設計の方向性が見えてきます。
具体的に確認するデータ③:障害履歴
障害履歴の確認も重要なポイントです。
- 同じ局で障害が繰り返し発生していないか
- 装置系・電源系・伝送系のどこに偏っているか
- 障害時にKPIやトラフィックがどう影響を受けているか
ここで、
- 設計の見直しで解決すべき問題なのか
- 保守・運用側で対応すべき問題なのか
を切り分けることも、設計者の重要な役割です。
整理した結果をどう設計に活かすのか
KPI・トラフィック・障害履歴を整理すると、
次のような設計方針が見えてきます。
- 特定エリアへの新規基地局追加
- アンテナ方位・チルトの見直し
- パラメータ調整による改善
- 伝送帯域の増強や冗長化
この結果が、次のカテゴリである
- エリア設計・アンテナ設計
- 伝送・IP設計
へとつながっていきます。
この業務で身につくスキルとキャリア価値
設計前提条件の整理では、次のような力が身につきます。
- 数字から課題を読み取る分析力
- 無線・伝送・運用を横断した視点
- 設計方針を言語化する説明力
これらは、
- 無線設計の上位ポジション
- 品質改善(J7)
- PM/PMO(J8)
へステップアップする際の土台となるスキルです。
この作業は次のどの工程につながるか
整理した設計前提条件は、 次の工程である エリア設計・アンテナ設計 へ引き継がれます。
▶ 次に読むべき記事: 【J3-②】エリア設計・アンテナ設計の実務解説
また、設計内容は最終的に 施工(J1)や試験(J4)を通じて 現場へ反映されます。
この業務に向いている人
- 数字やログを見るのが苦ではない
- 原因を考えるのが好き
- 運用・保守経験を設計に活かしたい
この業務経験は、 品質改善(J7) や PM/PMO(J8) へのステップアップにも直結します。
まとめ
設計前提条件の整理は、 設計業務の中でも 最も重要で、経験が活きる工程 の一つです。
この工程を理解することで、 「設計職が何を考えて仕事をしているのか」 が具体的に見えてきます。
▶ 設計フェーズ全体は J3 設計カテゴリ一覧 をご覧ください。